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その1−西 康晴

先日機会があって SEEK のドラフト版を見てみました。

SEEKとは、アメリカの情報系の大学で学部生向けに IEEE と ACMで検討されているカリキュラムです。

CCSE(Computing Curricula Software Engineering Volume) の知識エリアとして定義されています。 内容は SWEBOK の改訂版をイメージしていただくと分かると思います。

さてどんな内容でしょうか。
情報系の学部を卒業された方は、ご自分が習った内容をイメージしてみてください。
それ以外の学部出身の皆さんは、会社で習った内容からイメージしてみてください。

SEEK は10の知識エリアに分けられています。。

  • Foundations,
  • Profeessional Practice,
  • Requirement,
  • Design,
  • Construction,
  • Verification & Validation,
  • Evolution & Maintainance,
  • Process,
  • Quality,
  • Management

です。
この全てを260時間(単位)かけて教えるそうです。

いやはや驚きました!


分かりやすく書けば、戦争が終わって「ギブミーチョコレート」と叫んでいる子供たちの気分でしょうか。
こいつらと戦争しても勝てないや。
だって食べてるものが違うもん。

そんな気分になりました。
会合に出席していた方は、大学卒業時で日本の3年目から4年目のエンジニアの知識があるだろうと話していました。

とはいえ良く中身を読んでみると、別に凄い技術が含まれているわけではありません。

例えば Eliciting requirements(要求の抽出)を見ると、

  • What to elicit
  • Interviews
  • Questionnaires and surveys
  • Brainstorming and related techniques (e.g. stories in XP)
  • Participatory tehniques (e.g. JAD/RAD)
  • Prototyping (formative) (e.g. storyboarding for HCI)
  • Use case analysis
です。

目新しい技術がありますか?

翻って日本のソフトウェア工学の教育を見ると、何ともお寒い限りです。
「情報」という名前がついている学部であっても、きちんとソフトウェア工学を教えているところばかりではありません。

もしかしたら SEEK を見て、目新しいことは無いと軽んじるかもしれませんが、全国津々浦々の大学で全て教えているという状況を想像してみれば、どんなに恐ろしい状況なのかが分かると思います。

もちろん日本の大学も手をこまねいているばかりではありません。
アクレディテーションという名前で学科の認証を行うためにカリキュラムを整備し、少しでも良いエンジニアを育てようとしています。

しかし、問題の根幹は他にあると筆者は考えています。

そもそも教える内容が全て海外で開発されたものばかりなのです。

ソフトウェア産業は、OSもツールも技法も方法論も輸入物の産業なんですね。

これでは世界のリーダーシップを取るのは難しいでしょう。

同じ技術を持っていたら価格競争力に陥るだけです。

一昔前の日本であればその競争は得意だったのですが、今では中国やインドにかないません。
同じ技術ではダメなのです。

日本には、良いソフトウェア組織がたくさんあると信じています。
とおり一遍の技術だけでなく、多くのノウハウをため込んで、非常に品質の良いソフトウェアを速く作れる組織がたくさんあるはずです。

品質が低いと毎日マスコミに騒がれるような、そんな産業ではなかったはずなのです。

日本は何をすればよいでしょうか。

まず基本的なソフトウェア工学の教育をきちっと大学で行う。
ダメなら企業で徹底的に仕込む。そこをベースラインとして、日本が長年ため込んできた事例やノウハウを組織化して立ち向かう。

その積み重ねが必要なのだと思います。

もちろん大きな組織は既に行っているでしょう。

しかし日本を支えていると言っても過言ではない小さな多数のソフトハウスにまで、そのノウハウが伝授されているでしょうか。とても肯定できません。

まだ間に合います。

学会でもいいでしょう。
企業間のコンソーシアムでもいいでしょう。
オープンなコミュニティでもいいでしょう。
これまで以上に日本のソフトウェア開発のノウハウを体系化して流通させる必要があるのです。

S-open もその一翼を担うよう一生懸命努力していかねばなりません。

一緒に日本のソフトウェア産業をもり立てていきましょう。